円安と円高どっちが生活に影響がある?
円安と円高は、日本の社会情勢だけでなく、世界中の経済動向や国際的な出来事に影響されて変動するのが一般的です。日々のニュースで耳にすることが多いこの為替レートの変動ですが、具体的に円安と円高のどちらが私たちの生活により大きな影響を与えるのでしょうか。
その前に、注意点として円安と円高のどちらの状態が「絶対に良い」とは言い切れません。どちらの状況にもメリットとデメリットが存在します。本記事では、円安と円高が生活に与える影響と、それぞれの状態がもたらす違いについて詳しく解説します。
円安・円高の歴史的背景と変動要因
日本の為替相場は、戦後から現代に至るまでさまざまな変動を経験してきました。特に大きな出来事としては、1971年のニクソン・ショックや、1985年のプラザ合意があります。これらの出来事は、円の大幅な変動を引き起こし、日本経済に大きな影響を与えました。
ニクソン・ショック(1971年): アメリカが金とドルの交換停止を発表し、固定相場制が崩壊しました。この出来事により、為替市場は自由化され、日本円も変動相場制へ移行しました。
プラザ合意(1985年): アメリカの経済政策を改善するために、日本を含む主要先進国が協力してドル安政策を進めました。この合意の結果、円は急速に高騰し、円高不況と呼ばれる経済的な混乱が生じました。
これらの歴史的な背景からも分かるように、円安・円高の変動は単に国内の要因だけでなく、国際的な経済政策や出来事によって大きく左右されるのです。
円安と円高はどのような状態?
円安と円高はニュースなどで頻繁に取り上げられますが、その具体的な意味を理解している人は意外に少ないかもしれません。
円安:日本円の価値が他国の通貨に対して低くなる状態。例えば、1ドル=120円のような状況です。
円高:日本円の価値が他国の通貨に対して高くなる状態。例えば、1ドル=80円のような状況です。
円安では、輸入する商品に対して支払う金額が増えるため、輸入品や原材料費が高騰しやすくなります。
一方、円高の際はその逆で、輸入品の価格が下がり、国内でのコストを抑えることが可能です。しかし、円高が続くと輸出産業に悪影響を与え、経済全体の活気が失われるリスクもあります。
円高と円安をドルで考えてみる
円高と円安をドルで考えてみると1ドル=100円を基準とすれば、具体的に円高と円安の影響についてわかります。
円高状態は円の価値が高くなっているため、1ドル=80円なら1ドルの商品を買おうとすれば80円で購入が可能です。
しかし、円安状態では円の価値が低くなっているため、1ドル=120円なら1ドルの商品を買おうとすれば120円必要になります。
海外からドルで商品を購入する場合、円高か円安かによって必要になる経費が大きく変わるため国内での販売価格も大きく変わるといえるでしょう。
これが個人でやり取りする金額規模ではなく、企業や国などがおこなっている大きな取引になると日本円で数百万から数千万円の影響が生まれるでしょう。
円安のメリット・デメリット
メリット
輸出企業の利益増加:円安は日本製品の海外での価格競争力を高め、輸出業者にとっては追い風となります。
観光業の活性化:外国人観光客にとって円安時は旅行費用が安く感じられるため、観光客が増加します。
デメリット
輸入品の値上がり:食品やエネルギーなどの生活必需品が高騰し、消費者の負担が増加します。
原材料の高騰:製造業では原材料のコスト増が利益圧迫要因となることがあります。
円高のメリット・デメリット
メリット
輸入コストの低下:原材料や製品の輸入コストが減少し、消費者にとっての価格低下につながります。
海外旅行のしやすさ:円高時には、円の購買力が上がり、海外旅行の費用が抑えられます。
デメリット
輸出企業の競争力低下:海外での日本製品の価格が上がり、競争力が低下する可能性があります。
デフレ圧力の増大:物価の下落傾向が続くことで、経済成長が停滞するリスクが高まります。
円安状態の方が望ましい業界について
円安状態の方が望ましい業界もいくつか存在しており、反対に円高状態では経営などにかかる負担が大きくなってしまいます。
円安状態の方が望ましい業界としては観光業が挙げられ、観光業の中でも特にインバウンドを対象にしている場合は影響が大きいです。
インバウンドからすれば自分たちが持っているお金の価値が高いほうが、日本への旅行費用が抑えられるのに加えて買い物なども安価にできます。
インバウンドが多くなって日本国内でお金を使用する機会が多くなれば、免税店の大きな売上にもつながるでしょう。
実際に免税店の多くは円高時よりも円安時の方が売上が多くなる傾向にあるため、円安時には特にインバウンドに向けた商品を揃えています。
また、先述したように輸入業は円高時の方がメリットが大きい一方、輸出業では円安時の方がメリットが大きいです。
理由はドルで商品を輸出した場合、日本国内などでドルから日本円に為替をすれば多くの日本円を手にできるからといえます。
円安状態の方が日常生活への影響が大きくなる
円安状態では日本の産業やサービスが海外に販売しやすくなりますが、反対に海外から日本へ商品を輸入するコストが大きくなるのは避けられません。
また、注意しなければならない点として挙げられるのが、商品の原材料によっても商品の値段に影響を与える点です。
商品の生産自体は国内でおこなっていたとしても、商品を生産するのに必要になる原材料を輸入している場合は生産コストが高くなります。
円安状態では基本的に物価が全体的に上がる傾向にあるため、生活必需品も高くなって生活に少しずつですが影響を与える可能性が高いです。
一般的にぜいたく品と呼ばれる商品が高くなる分には対処も簡単ですが、生活必需品が高くなるのは対処が難しくなります。
まとめ
円安と円高はどちらの状態でも日常生活には影響が生まれ、業界などによっても円安と円高の恩恵が違うのが特徴です。
しかし、日常生活に特に大きな影響を与えるのは円安時であり、輸入コストが高くなって生活必需品の物価も高くなりやすいといえます。
注意点としては円安時にすべての物価が高くなるわけではなく、円安時でも物価が低くなったり、変わらなかったりするものもあるのは理解しておきましょう。